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特集

松平敬

カテゴリ : Exotic Grammar 

掲載: 2010年03月26日 22:45

更新: 2010年03月29日 22:06

text:池田敏弘(新宿店)

松平敬は主に現代音楽の世界で活躍する気鋭の声楽家であるが、2009年シュトックハウゼンの《私は空を散歩する》の日本初演を手掛け、また自身シュトックハウゼン講習会にて作曲技法を学ぶなどシュトックハウゼン縁の演奏家としてとりわけ有名である。(自身のホームページでも楽曲分析など掲載してあるので是非参照頂きたい)
また、シューベルトの《冬の旅》とケージの《冬の音楽》を組み合わせたコンサートなど独創的な企画でもその才を発揮。松平はレコード芸術誌に海外盤試聴記を寄せるライターとしても活躍しているが、そこでのアイテムのピックアップの仕方や、声楽家ならではのプレイヤー視点を織り込んだ楽曲分析が非常に面白く、是非こちらもチェックして頂きたい。

この度松平のデビュー・アルバムが発表されることとなったが、この作品はクラシックの世界に於いては非常に異例というか前例が無いというか、後述するが、その一見突飛とも思える作品のコンセプトの提示と、それをやり抜く実行力、松平にしか成し得ない高度な技術に裏打ちされた優れた歌唱によって有無を言わさぬ説得力を併せ持ったとてつもなく刺激に満ちた内容に仕上がっている。

まず選曲と曲順のコンセプトが非常に興味深い。作者不詳の13世紀の《夏のカノン》に始まり、次第に時代を追っていき、丁度ブリッジ役として松平自身作曲の《モノ=ポリ》(この作品タイトルも何と暗示的なのだろうか)を挟み、そこからは再び時代を次第にさかのぼって行き、最後はギョーム・ド・マショーの《我が終わりは我が始まり》に幕を閉じるのである。アルバムの松平自身の解説(これも相当面白い)にも詳しいが、このマショーの作品は逆行カノンによって作曲されており、このアルバムの曲順がそのままその技法の相似形となる様に配置されているのだ。また、様々なカノンを用いた楽曲を全体に散りばめ、時代と共に変容するカノンの技法も聴きどころで、(自身作曲の《モノ=ポリ》では子音、舌打ちやエフェクトも用いたノイズによる現在形カノンの世界を見せてくれる)その事がさらにアルバムの背骨として秀逸なコンセプトをより際立てている。

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